広報支援の依頼がきた

3月の初めに、10年ぶりに産婦人科の女医先生からお電話をいただいた。もう80歳を過ぎて現場の診療は引退されたそうだが、その分時間的余裕ができたので「40年余の産婦人科医院の歩みを広報に綴ってみたい。お手伝いいただけないか。」との依頼だった。

私が仕事として関わったのは、現在の息子先生が大学病院から戻って院長に就任し、私も講師として参加していた経営セミナーに来られたことがきっかけであった。「現在の医院の隣に新館を建てたい」という依頼があり、3年間の顧問契約を交わして仕事が始まった。

最初の仕事は、隣接した土地の購入であったが、売り主に相当足元を見られている印象があり、話し合いの場であれこれ指摘し、かなりの値引きに成功することができた。それを契機に院長との信頼関係が強まり、思い通りの仕事をやらせていただくことになった。

その仕事の一つが「ニューズレターの発行」であった。なつかしさに当時の資料を探したら、創刊号発刊に向けた打合せメモが出てきた。そこには、「ニューズレター3つの意義と役割」が囲みで掲載されていた。これが今読んでもなかなかよい。以下紹介したい。

ニューズレター 3つの意義と役割

  1. 「伝える」「読む」「考える」ニューズレターを媒介に、院内で働くすべてのスタッフの共通認識、職種を超えた生きたコミュニケーションの場とする。
  2. 患者さんの声や仕事を通じて感じたことなど、職員一人ひとりの仕事を積極的に評価して、その出来事を〇〇産婦人科の宝物にしていく場とする。
  3. 患者数の月別統計や患者アンケートなどから医院の現状を正確に把握し、職員みんなで課題や改善方向を検討していく場とする。

産婦人科医院のスタッフは60人近くで、院長、5年前に亡くなった大先生、事務長の3人以外はすべて女性。しかも入院と外来担当の助産師と看護師、受付事務、調理と各部門に分かれて働いており、院長の思いをそれぞれのスタッフに届け、まとめていくことが最も大切で且つ困難な仕事であると思えた。だからこそのニューズレターなのだ、と考えた。

 毎月出そうと意気込んだが、実際には2か月に1回。巻頭言の「院長の言葉」は院長の思いを確かめながらほとんど私が代筆した。それから統計を重視し、年間の分娩数や里帰り出産の推移、どの地域から患者さんが訪れているかの地図落とし作業、などの結果を掲載し、医院の現状と課題を一目でわかるように工夫した。大変だったが楽しい仕事だった…。

私が関わったのは、約2年間10号まで。今度お聞きしたら、一時休刊となったが、もう一度再開して現在38号。これからは年3回発行をめざしたいということであった。紙面の構成も創刊の時の方針がほぼ受け継がれていた。そして、新人スタッフの紹介記事が大きなスペースを占めていることが気になった。つまり、スタッフが70人に増えた半面、入れ替わりが激しくなっている、ということであり、「院内で働くすべてのスタッフの共通認識」を築く場としてのニューズレターの役割、その必要性が一層強く感じられた。

女医先生は、朝の連ドラの「おちょやん」みたいな明るい元気な方である。まだまだ医院の将来が気がかりなご様子。私は、できる限りのご支援をしたいと決意している…。

筆者プロフィール

美留町 利朗(みるまち としろう)

1976年茨城大学卒業(経済学士)。1980年立命館大学院にて社会学修士取得(地域社会学)。1985年㈱関西計画技術研究所主任研究員。1994年3月に㈱地域計画医療研究所を設立。代表取締役に就任し、現在に至る。2008年~2009年同志社大学大学院ビジネス研究科嘱託講師(地域医療論)。2014年4月~2017年3月まで(公社)日本医業経営コンサルタント協会常任委員会地域包括ケア専門分科会委員長。2018年11月より2019年3月まで常任委員会教育研修委員会委員。現在、京都支部監査役、同支部主催京都の医療・介護研究会運営委員会代表としても活躍中。地域包括ケアシステムや在宅医療、公的介護保険制度等をテーマに講演会、研究報告、論文、学会報告等多数。

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